今年2月末に竣工した太子堂の賃貸物件「QUANDO(クアンド)」(世田谷区太子堂5)が話題を呼んでいる。
軽量鉄骨造3階建てで、東急田園都市線・三軒茶屋駅から徒歩10分の距離にある。建築設計はブルースタジオ(中野区)が手掛け、日本の住宅リノベーションの第一人者として知られる同社専務・大島芳彦さんの信念「物語をデザインする」をコンセプトに据えた。
3月12日に行われた内覧会の後、入居の申し込みがすでに4件入っているという。大島さんは「これまでの物件と比べても、非常に早いペース」と話す。
かつて宿場町だった周辺地域の歴史的背景を考慮に入れ、デザインは江戸時代の宿屋「旅籠(はたご)」をイメージ。玄関の扉には格子戸を採用した。「この周辺地域は、人をもてなす感覚にあふれた宿場町だったことも含め、太子堂八幡神社を中心として古くから人間が住んでおり、『時間の蓄積』がある」と大島さん。ラテン語で「時」を意味するQUANDOにはそのような思いが込められている。
「この物件に住むのは、外部から移り住んでくる人たち。いわば『異邦人』。その異邦人に対して、便利とかおしゃれといった表層的で、安易に消費されてしまうような価値観ではなく、この土地の地域性と『そこに住む』という当事者意識を感じてほしかった」と明かす。
「『まちに住む』『まちに根付く』といったことの本質をしっかり考えないと、物件は単なる耐久消費財になってしまう」とも。
全4戸、賃料は13万2,000円から。同社は2008年にも、世田谷区若林にデザイナーズ賃貸マンション「LIFT(リフト)」を開いている。