松陰神社近くのアートギャラリー「Gallery and Wonder(ギャラリー・アンド・ワンダー)」(世田谷区若林4、TEL 03-6874-0679)で販売されている人形「あ・doll」がひそかな注目を集めている。
24色のカラフルなオーブン粘土(焼いて固める粘土)でデザインされた顔部分と、メッセージ付きの胴体から成る同人形。1つ810円で現在、月に約100個売れるという。
人形を作っているのは、ダウン症の子どもを持つ保護者グループ「世田谷ふたばの会」内のグループ「クラフトClass」。同グループは、18~35歳までのものづくりが好きなダウン症の人たち10人がメンバーだ。
メンバーは顔部分のみを制作。ギャラリー店主で、広告カメラマンの和田茂さんが粘土をオーブンで焼き、和田さんの知人でアーティストの石田有二さんが胴体を取り付ける。
和田さんと石田さんが考えたというメッセージは現在150パターンほどあり、1つのコピーにつき6色のバリエーションがある。「同じ組み合わせはない。顔の色とメッセージの書かれた紙の色のコーディネートを楽しんでほしい」と和田さん。売れ筋のメッセージは「ありがとう」「いってらっしゃい」だという。9割を占めるという女性客からは「かわいい」という声が多く寄せられている。和田さんは今後、第2、第3弾の「あ・doll」も展開していきたいという。
「あ・doll」の「あ」は、英語で「広告」を意味する「advertising(アドバタイジング)」から。メッセージが書かれている部分を、広告枠として売り出している。「企業のコーポレートアイデンティティー(企業イメージを発信することで、ブランディングにつなげる企業戦略)の表現場所に使ってもらえたら」と和田さん。これまで、東京湾クルーズなどを運航する東京ヴァンテアンクルーズ(港区海岸)などに採用された実績がある。
和田さんには「あ・doll」を通じて、ギャラリーを健常者とダウン症の人たちが垣根なく集える場所にする目標がある。「世間のダウン症に対する知識はまだまだ。かといって、障がいを前面に押し出すと『お涙頂戴』になってしまう。私が伝えたいのは彼らを『支援』するのではなく、健常者と何かを『一緒』にやっていくということ。健常者のママさんたちが加わってくれることが理想」と力を込める。
なおギャラリーでは、「あ・doll」のほか、和田さんが修理したビンテージのポラロイドカメラ「SX-70」や、アーティスト手作りの雑貨、彫刻、絵画なども販売している。
営業時間は11時~17時。月曜・火曜定休。