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三軒茶屋のカフェ「ゆうじ屋」が3周年-脳性まひの店主が「言葉で作る」メニュー提供

店主の実方裕二さん

店主の実方裕二さん

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 三軒茶屋のカフェ「ゆうじ屋」(世田谷区三軒茶屋2、TEL 03-3418-6671)が3月6日、オープン3周年を迎えた。

「7種のグリル野菜カレー」と「シフォンケーキ」

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 先天性脳性まひの障がいを持つ店主の実方裕二さん(55歳)は「養護学校時代に自分が何かを頼むとわがままになるから我慢したほうが良いという感覚と、障がいに対するコンプレッスが重なり合い、自分に自信が持てなかった」と振り返る。

 実方さんは、手足の操作と言語の発声などに不自由を抱える一方、「まわりに依存せず自立した生活を送りたい」との思いから、介助者の手助けもあり19歳で一人暮らしを始めた。

 カフェ出店のきっかけは29歳の時。激辛カレーブームでインドカレーに魅せられた実方さんが、カレーを食べ歩き、本やテレビで覚えたレシピに独自のアレンジを加えながら、介助者に口頭で作り方を伝え作ってもらったことだった。

「手伝ってもらえば、自分の料理ができるんだ」「まさか、自分に(料理が)できるわけがない」と二重の感情が交差する中、介助者や友人たちが実方さんの背中を押したという。友人のバンドから「出演するライブハウスでカレーを販売してほしい」との誘いをきっかけに、約10年間にわたりカレー販売を手掛けながら、電動車椅子に乗ってオリジナルレシピのカレーやケーキの宅配を始め、2012年に同店をオープンした。

 「言葉で作る調理人」を自認する実方さんは「一般的に『自作』 といえば、自分の手で作ることをと指す感覚が強いが、私の場合は、介助の人たちに調理法を伝えながら、自分なりにアレンジしてオリジナルメニューを仕上げていくこと。『料理が好きだ。食べ物屋で生計を立てていくのだ』という思いがゆうじ屋の原点」と笑顔を見せる。

 実方さんは、日曜日を除き、電動車椅子で昼過ぎから夜遅くまでケーキの移動販売に励む。「ゆうじ屋は 甘さ控えて 味を増す」と書いた看板を掲げ、近隣のみならず、成城学園、梅が丘、新宿などに出向く。商品は「日替わりシフォンケーキ」「自家製スモークチーズとソーセージのマフィン」(以上、230円)、「ベーコンと野菜のキッシュ」(280円)など。

 カフェでは、実方さんのレシピを参考に介助者の店長がオリジナルのカレーを提供する。「7種のグリル野菜カレー」、カシューナッツペーストでマイルドに仕上げた「チキンカレー」(以上800円)、店で燻製した「エビとホタテの燻製カレー」(900円)など。

 実方さんオリジナルの「日替わりシフォン」「紅茶シフォン」「ガトーカカオ」「季節のチーズケーキ」「季節のタルト」「こだわりキッシュ」などのドリンクセット(以上、500円)も用意する。15時まではランチメニューとして、ドリンク付きの「カレーセット」(900円)、「キッシュセット」(600円)も。それぞれプラス100円でケーキを追加できる。

 同店では、音楽バンドを招いたライブも不定期で開催する。パンク好きという実方さんも、バンド「ラブ・エロ・ピース」でボーカルとして歌声を絞り出し、シャウトする。

「介助してもらって生きるのが、障がい者の文化だと思う。障がい者運動もあちこちで行われているが、私は楽しんで生きるモデルになりたい。ライブもいろいろな人に聴いてもらえれば」と実方さん。

 営業時間は12時~20時(土曜は23時まで)。火曜定休。

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