三軒茶屋の茶沢通り沿いに、おでん店「奥三茶 たまや」(世田谷区太子堂5、TEL 03-6805-4688)がオープンして1カ月がたった。1階はカウンターのみのスタンディング、2階は現在テーブル席を準備中。
店主の土屋洸太さんは、和食やカウンターバルの店で10年以上経験を積み独立。客として常連だった池尻大橋の「三宿大衆ブギウギバル」(同区池尻3)のオーナー、福岡照夫さんとの業務委託で同店をオープンした。
店名は2歳になった愛娘の名前「たまき」から付けた。「初めての独立にあたり、改めて何のために働くのか考えた結果、やはり守るべき家族のためだと思った。良い意味でプレッシャーにもなる」と土屋さん。「奥三茶」と付けたのは「三軒茶屋でもなく太子堂でもなく、あえて『奥三茶』と名付けることで、改めてこの地域に注目してもらい、エリアを盛り上げたいから」だという。
同店は、おでん、地鶏、野菜の3本柱を主力にメニューを展開。おでんの特徴は、牛、豚、鶏の肉塊が入った「肉おでん」。イタリア北部の煮込み料理「ボリート・ミスト」にヒントを得た創作で、つゆはシンプルに昆布、カツオ、塩、酒のみ。肉のうま味がアクセントになっている。
地鶏料理には「地鶏特有の歯応えがあり、かめばかむほどうま味をダイレクトに感じる」という九州の知覧鶏を使う。野菜は新潟県の河合農場から直送。「海が近く塩分濃度が高い土壌で、うま味が凝縮された野菜。季節の旬のものを送ってもらっている」と、こだわる。
メニューは「たまご」(180円)、「牛すね」(480円)、「豚バラ軟骨」(380円)、「お得な肉おでん盛り合わせ」(5品、1,380円)、「知覧鶏のたたき盛り合わせ」(880円)、「河合農園の新鮮野菜盛り合わせ」(S=580円、L=780円)など。
ドリンクの主力は「カップ酒」(480円~)。日本各地の日本酒30種類ほどをそろえる。「カップ酒というと、チープなイメージがあるかもしれないが、蔵元が一つ一つその土地の風土をカップに閉じ込めている。飲みきりサイズなので酸化せずにフレッシュで、現地で造られた生の状態が楽しめるのがカップ酒。個性的なラベルのデザインも楽しんでほしい」とその魅力を語る。
「カップ酒なら、うちのように小さな店でもたくさん種類が用意でき、お客さんに喜んでもらえると思った。湯煎で熱かんにもしやすく、これからの寒い時期にぴったり」とも。おでんには「スパークリングワインがお薦め。泡とおでんの相性が抜群」と土屋さん。おでんのつゆで日本酒を割る「ダシ割り」も対応する。
土屋さんにとって三軒茶屋は「仕事終わりに飲みに行く街」だったという。地鶏の仕入れ先は、自身が常連だった三角地帯の「オオモリヤ」(同区三軒茶屋2)から紹介してもらった。目指すのは「地域の人たちが楽しんでもらえる店」。
茶沢通り沿いに窓を大きく取り、ダシの香りが漂うと、自然と通行人が「持ち帰りはできるか」などと声を掛けてくるという。これも地域住民と窓越しに会話ができるようにした狙いだ。
1カ月の営業を振り返り、「三軒茶屋にはフレンドリーな方が多く、一人一人のお客さまを大事にしたいと改めて思った。毎日行ける普段使いの店になりたい」と土屋さん。「野菜が足りていない一人暮らしの人も、スタンディングで距離が近いので会話を楽しみに来てほしい」と来店を呼び掛ける。
営業時間は17時~翌3時(土曜=15時~、日曜・祝日=15時~24時)。