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インタビュー2014-05-30

この街に暮らすあなた自身の物語?
「三軒茶屋星座館」著者・柴崎竜人さんに聞く、三軒茶屋に住む人のドラマとは

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「道は細く、複雑に入り組んでいた。はじめてこの路地を訪れた人間は、必ずといっていいほど方向感覚を失ってしまう。狭い道が折れ曲がり、突き当たり、まるで人間の血管のように細部まで枝分かれしている。酔っ払いながらここを歩けば、通り全体が生き物のようにうねって見えた。」

これは2013年12月に販売された柴崎竜人さんの著書「三軒茶屋星座館」(講談社)冒頭の一節だ。同作品の舞台は、三軒茶屋の裏路地にひっそりとたたずむプラネタリウム兼バー。モチーフは三軒茶屋の三角地帯。足を踏み入れたことがある人であれば、この一節に思わずうなずいてしまう人もいるのではないだろうか?

同作では、客に星座の講釈を聞かせる「三軒茶屋星座館」の店主・和真の下に、娘だという美少女・月子を連れて10年ぶりに弟・創馬が帰ってくることで始まる親子3人の奇妙な共同生活が軸に描かれている。そして、星座館のお客さんとしてやってくる高校生・キャバ嬢・オカマ・謎の老人…。一癖ある登場人物たちが、主人公・和馬などの力を借りて自信の問題と向き合う物語が展開される。今回、著者の柴崎さんに三軒茶屋を舞台にした背景から物語の魅力、そして三軒茶屋への思いを聞いた。

問題を抱えながら目の前にある人生を精いっぱい生きる、風変わりな「三軒茶屋」の住民たちの物語

―そもそも三軒茶屋を舞台にしようと思ったきっかけは?

「僕自身、20年ほど前から三軒茶屋に住んでいて、いつか三軒茶屋を題材にした作品を作りたいという思いがあったんです。そして舞台にするなら、新しい物と古い物がごちゃ混ぜになった『三角地帯』を、と考えていました。三角地帯には、いい意味で一癖あるようないいろいろな人が行き交っているし、そうした風変わりな人が出てくる物語はきっと面白いものになるという自信もありました。もともと星やギリシャ神話も好きだったので、その要素を取り入れて『こういう店がこの街にあったらいいな』と思って書き書き始めました」(柴崎さん)

キャラクターはどのように作っていったのでしょうか?

「普段物語のキャラクターの設定を考えるときは、舞台となる街にどんな人が生活しているかを考えます。ただ今回は僕自身、三角地帯を夜な夜な飲み歩いているので、自然とキャラクターは出来あがってきたと思います。『いつも酔っ払いながら、問題を、希望ごと抱えている』というところは、作中の人物に共通している気がします(笑)。三軒茶屋かいわいの在住の人が読んだとき、『確かにこういう人達が三角地帯歩いているね』って思ってもらえたらうれしいです」

―個性的な登場人物のエピソードや、主人公に関わる人同士の絆や情だったり、三軒茶屋という街のトーンや息づかいが今作に反映されているのは、ずっとこの街で生活している柴崎さんだからこそ、表現できるということなんですね。この物語の魅力を教えてください。

「一つは、やはり、描かれる街ですね。実在する店などもたくさん書かせてもらっているので、かいわいに来たことがある人にとっては、読みながら『これはあそこ店のことを言っているな』と分かってもらえたり、情景が目に浮かんできたりするのではないかなと思います。少しだけ裏話をすると、『名西酒造』という徳島の郷土料理屋があるのですが、物語の中では高知料理屋に変えて書かせてもらっています。三軒茶屋に来たことがない人たちもモチーフになった街が実際にあるということは大きな魅力ではないかなと思いますね。

そしてもう一つは、描いた物語のテーマが『疑似家族』の心の交流というストーリーなので、三軒茶屋にゆかりの無い人が読んでも、スッと心に入ってくる話になっているのではないかなと思います」

―三軒茶屋への愛がありありと伝わってきますが、この街に引かれる理由は?

「雑多なところですね。人も老若男女入り乱れているし、深夜まで開いているおいしい店もたくさんある。映画館や劇場やライブハウスといった文化施設も豊富ですしね。そして何より、三軒茶屋に住んでいる人ってこの街をすごく好きな人が多い。住人が地元をこよなく愛してる、そういう雰囲気がいっそう街を魅力的にしていると思います。三軒茶屋は今でこそ、トレンドスポットとして色んなメディアで取り扱ってもらえているけれど、それでもまだまだ東京の人しか知らない小さな街です(笑)。この小説でもっとこの街に興味を持ってくれる人がいたらうれしいなと思います」

ギリシャ神話の登場人物の“人間臭さ”に引かれて

―各章の名前は全て星座名で統一。そして、登場人物が転機を迎える大事なタイミングで、物語の主人公である和真が講釈するのも超訳・ギリシャ神話。今作のキーになっているギリシャ神話に柴崎さんが引かれる理由とは何でしょうか?

「ギリシャ神話に登場する神様たちがすごく強烈な個性を持っているということと、僕ら人間と同じでものすごいクズばっかりなんですよ(笑)。神様なのに人間くさいというか…。そこにすごく、いとしさを感じるんですね」

―なるほど。だからこそギリシャ魅力をもっと多くの人に知ってほしいと…。

「そうですね。『自分の星座が何座か』は皆知っているのに、自分の星座にまつわる神話を知らない人が多い。だからそういう人たちにギリシャ神話を分かりやすい言葉に置き換えて、魅力を伝えることができたらいいなと思ったんです」

― その神話のエピソードが物語にうまくリンクしていますものね。一話ごと読み切りになっているのも、とても読みやすいところです。物語を読み終えたところでも、回収されていない伏線がまだまだあるのですが、続編はあるのでしょうか?

「はい。おかげさまで続編が決定していて、現在執筆中です。引き継ぎ三軒茶屋を舞台に、主人公の出自の秘密や、登場人物の意味深な一言などの意味が明らかにされていきます。まずは今作を読んで、この街の雰囲気や物語の世界にどっぷりと漬かってもらえたらうれしいですね」

―ありがとうございました。

【プロフィール】

柴崎竜人さん。1976(昭和51)年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、東京三菱銀行勤務、バーテンダー、コンセプトプランナーなどを経て、作家デビュー。映画「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」、ドラマ「レンアイカンソク」などの脚本も手掛ける。
三軒茶屋星座館特設サイト

柴崎竜人公式ページ

(文責:冨手公嘉/三軒茶屋経済新聞、写真:郡洋平、取材アシスタント:小池絢子/三軒茶屋経済新聞

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