三軒茶屋のフード系ベンチャー「ベースフード」(世田谷区三軒茶屋1)の製品第1弾となる生パスタ「BASE PASTA(ベースパスタ)」が注目を集めている。2月には経済誌「日経トレンディ」にも「先端フード」として取り上げられた。
正式な販売は2月下旬からを予定しているが、2016年10月よりクラウドファンディングで調達した資金を元に作った2150食分は1月末、支援者へ送った。2月内に2万食を製造し、自社サイトで販売する。2017年内に海外展開も視野に入れる。価格は1食500円を予定している。
パスタに使う麺は岐阜の「小林生麺」製で、小麦全粒粉やチアシード、ビール酵母、ビタミンなどが豊富に練り込まれている。「ベースバスタは厚生労働省の基準に基づき、1食に必要な計31種類の栄養素全てを含むことに成功したパスタ。食習慣を変えずに、主食から全ての栄養を取る」と同社社長の橋本舜(しゅん)さん。カロリーは同量の生パスタと比べて約20%、糖質は約50%オフになるという。
クラウドファンディング支援者からは、「健康のためのパスタと思っていたが、普通のパスタより美味しい」、「モチモチの触感、チアシードの粒粒感や全粒粉の香ばしさが癖になる」といった意見が寄せられているという。
「麺がうまく固まらなかったり、ゆでたらドロドロになってしまったり」と試行錯誤を繰り返したが、開発を始めてから10カ月で完成にこぎ着けた。
パスタを選んだのは橋本さん。パンやラーメンなども候補に挙がったが、製品バリエーションやネット販売の観点などからパスタに落ち着いた。「これまでドリンク状の製品とバー状のものしかなかった完全栄養食品に新しい流れをつくりたい」と話す。
橋本さんはインターネット大手「DeNA」の出身。東京大学教養学部を2012年に卒業後、新卒でDeNAに入社。ゲーム事業や新規事業の立ち上げなどに5年間携わったのち、在職中の2016年4月に同社を立ち上げた。退職後の6月から本格的な製品開発に取り掛かった。12月には、DNA時代の同僚だった高橋篤哉さんも事業に加わり、2人体制となった。橋本さんは製品開発や原材料取引などを担当し、高橋さんはマーケティングやPRを手掛ける。
ベースフードという屋号には、ライフスタイルの「基礎(ベース)となる食品(フード)を作る」という思いが込められている。「人間に必要な栄養素が全て含まれた『新しい主食』を開発し、広めていく。健康を気にして食べるものを我慢することを無くし、食事をより自由で多彩にしたい」と橋本さん。
現在、「レストランやアスリート業界から関心を持たれている」という。「当社は、日本ではまだ珍しいフード系スタートアップ。IT企業出身の目線で、食品会社の新しい形を模索していきたい」と意気込む。
「三軒茶屋が大好きで長年住んでいるから」という理由で、オフィスは自宅。「おしゃれな街なのに片意地を張らなくていいし、親切な人も多い」と橋本さん。「誰でも安心して食べられる食品を作っているので、ベンチャー企業の多い渋谷や六本木よりも、地に足のついた三軒茶屋が会社のイメージに合う」とも。